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矯正歯科医院経営「初診カウンセリングを設計する」

成約率を高める要素 成約率を高めるためには、 「なぜ、矯正歯科治療をしたいのか?」 「なぜ、今なのか?」 「なぜ、当院なのか?」 の3つ要素を考えた初診カウンセリングが設計されている必要があります。 1. なぜ、矯正歯科治療をしたいのか? 矯正歯科治療のプロフェッショナルである先生方にとって、歯ならびの問題点の指摘、改善するための治療方法の提案は、得意分野だと思います。 しかし、治療の説明に多くの時間をかければ、成約率が上がってくるかといえば、そうではありません。矯正歯科治療は、きれいな歯ならびを手に入れるための手段であり、目的ではないからです。 「なぜ、矯正歯科治療をしたいのか?」が患者にとっての目的になります。この目的を共有できれば、話の軸がぶれないため、成約率は高くなります。 もちろん、「なぜ、矯正歯科治療をしたいのか?」が漠然としている患者も多く、この部分を明確にするステップが必要な場合もあります。すべて伝えてあげる必要があります。 2. なぜ、今なのか? 成人の初診カウンセリングで来院される方は、急に歯ならびが気になりだしたのでしょうか? 多くの場合、以前から気になっていたけども「何か」をきっかけに初診カウンセリングに行く、という行動にシフトします。 例えば、「いつから気になっていましたか?」などの質問を突破口に「なぜ、今なのか?」を明確にすることができれば、患者の背中を押してあげることもできます。 3. なぜ、当院なのか? 数件の初診カウンセリングを受診してから、どこで治療をするか決めている方も多くなってきています。 しかし、数ある歯科医院の中から初診カウンセリングでは指名されているわけですので、指名された理由が必ずあります。 その理由を把握することができれば、それに見合った提案ができます。そして、治療でも指名してもらえる可能性は高くなります。   初診カウンセリングを設計する 1. なぜ設計する必要があるか? 異業種での営業活動であれば、複数回の商談のなかで意思決定してもらうという場合が多いです。 例えば、商談を4回でまとめるように設計している会社であれば、1回目は◯◯、2回目は◯◯、3回目は◯◯、そして4回目に◯◯とステップ毎にゴールを設定しています。 しかし、矯正歯科医院の場合、複数回カウンセリングをして意思決定をしてもらうのではなく、1回の初診カウンセリングで意思決定をしてもらう必要があります。 (※意思決定とは次のアクションを決めることで契約をしてもらうことではありません。例えば、初診カウンセリング後に家族と相談して連絡を◯月◯日までに頂く等) 初診カウンセリングでは、時間も限られているため、患者のペースで初診相談が進んでしまうと、説明したいことも説明できずに、時間だけ過ぎてしまいます。 初診カウンセリングが設計できていないと、ノウハウの蓄積ができずに、行き当たりばったりのカウンセリングになってしまいます。 2. 初診カウンセリングの内容 意思決定をする際には、感情が理性的判断の下地を作ると言われています。 感情で意思決定をした後に、その意思決定を正当化するために、理性的判断をしているとも考えられます。 そのため、初診カウンセリングでは、患者の不安等、感情を意識した内容、流れにする必要があります。まず、初診カウンセリングで実施している内容を細分化していきます。そして、何の目的で実施しているかを明確にします。 ① 初診カウンセリングの流れの説明 初診カウンセリングがどのような内容か、分からないと不安なものです。まず、初診カウンセリングの流れを説明します。 ② 問診(ヒアリング) 問診をスムーズに行なうために、問診票を活用します。もし、問診票がうまく活用できていない場合には、内容の見直しが必要です。この部分で、「なぜ、矯正治療をしたいのか?」、「なぜ、今なのか?」、「なぜ、当院なのか?」ヒアリングできると後の説明は楽になります。 ③ 口腔内チェック ④ 写真撮影or口腔内スキャン ⑤ 矯正治療についての説明 矯正歯科治療の知識がない方には、矯正歯科治療について詳しく説明します。歯ならびをきれいにすることのメリットを説明します。 ⑥ 治療方針の説明 矯正歯科治療は、ほとんどの方がはじめての治療になります。治療中、治療後のことがイメージできるようにツールを使って説明していきます。 ⑦ 他の医院との違いについて 当院で治療をすることのメリットを説明します。他院との違いを整理できていない場合には、整理する必要があります。 ⑧ 治療費の説明 治療費は、口頭だけでの説明では伝わりにくいです。そのため、料金表や見積書を使いながら説明します。また、一括なのか、分割なのか、分割の回数などより具体的に説明していきます。 ⑨ 理解度の確認 今までの説明で分かりにくいことがなかったか、もう少し聞きたいことはないか等、確認します。 ⑩ オファー 矯正歯科治療の流れの説明をし、次のステップが検査であることを伝えます。そして、必ず検査予約のオファーをします。 3. 初診カウンセリングの役割 初診カウンセリングの内容毎に役割を決めていきます。コーディネーターを導入されているクリニックであれば、以下のような役割がオーソドックスです。 ① 初診カウンセリングの流れの説明…コーディネーター ② 問診(ヒアリング)…コーディネーター ③ 口腔内チェック…ドクター ④ 写真撮影or口腔内スキャナー…DH ⑤ 矯正治療についての説明…ドクター ⑥ 治療方針…ドクター ⑦ 他の医院との違いについて…コーディネーター ⑧ 治療費の説明…コーディネーター ⑨ 理解度の確認…コーディネーター ⑩ オファー…コーディネーター 初診カウンセリングを設計するポイントは、漏れなくダブりなくすることです。 役割が明確でない場合、コーディネーターが患者に聞いていることをまたドクターが同じことを聞いている、ということが起こります。 内容を細かく分類、その目的を明確にする、そして役割を明確にすることで初診カウンセリングフローができあがります。一度、ここまで作り上げ、機能している部分、機能していない部分をリビューし、機能していない部分は改善し、より満足度の高い初診カウンセリングにしていきます。 満足度が高ければ、必然的に成約率は高くなります。
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矯正歯科医院経営「先行指標」

院長の仕事は、日々意思決定の連続です。 その意思決定をスムーズにしていくことが次のステージに進むためには必要です。 診療が忙しくなれば、院長一人ですべてのことを意思決定していくことは難しくなります。そのため、スタッフに仕事を任せる、つまり意思決定をスタッフに任せていきます。 仕事を任せる際には、「◯◯な場合は相談してください」、とスタッフに意思決定の基準を提示されていると思います。スタッフに仕事を任せる際に基準を提示されているように、自分自身で意思決定する際にも基準を設けておけばスムーズに意思決定をすることができます。   経営に関する基準は、「数値基準」がベースになります。この数値基準を持っていることで、意思決定の質が高まり、またスピード感もでてきます。   内閣府が発表している景気動向指数は、先行指標、一致指標、遅行指標の3つに分類されています。 例えば、先行指標である求人数が増えると、一致指標である有効求人倍率が数ヶ月後に上がり、遅行指標である完全失業率がその数ヶ月後に上がる、という流れです。求人数を見ておけば、有効求人倍率も完全失業率も予測できるわけです。   矯正歯科医院経営の場合、先行指標が初診相談数、一致指標が成約率、遅行指標が入金額(財務諸表データ)と考えることができます。 一般的に、初診相談数が増えると、翌月の契約数が増え、翌々月の入金が増える、という流れになります。入金額が少なくて、バタバタするのでは遅いわけです。   売上を構成する要素の数値管理 1. 初診相談数 矯正歯科医院経営の先行指標である初診相談数。 初診相談数を記録されているクリニックがほとんどだと思います。しかし、ただ記録するだけでは、次のアクションに結びつかず、もったいない状態です。   Step.1 「来院経路を把握する」 初診相談の内訳まで管理していくことで、次のアクションに結びつきやすくなります。矯正歯科医院の初診相談の来院経路は、 ① ホームページ ② 患者・家族紹介 ③ 一般歯科紹介 ④ 看板 ⑤ 通りがかり ⑥ 広告 に分類することができます。来院経路別に初診相談数を管理していきます。   Step.2 「基準を作る」 過去データを集計し、来院経路別の基準を作る準備をします。例えば、過去1年間のデータを集計し、月平均の来院内訳がホームページ10件、患者・家族紹介5件、一般歯科紹介5件だったとします。 クリニックとして、ホームページをリニューアルしてさらにホームページからの初診相談数を増やしていく計画であれば、基準を高く設定します。同じように他の来院経路も計画に合わせて基準を設定していきます。この基準をクリアしていればOK、クリアしていなければNGとシンプルにしておきます。 また、広告費の基準も設けておきます。例えば、リスティング広告を月額20万円使って、初診相談が20件であれば、1件の初診獲得広告単価は1万円になります。1万円を超えるとNGとシンプルに基準を設けておきます。   Step.3 「基準をもとにアクションを考える」 毎月、来院経路及び初診獲得広告単価の集計を行い、基準に達していない部分に関して、アクションプランを考えていきます。 例えば、ホームページからの初診相談数が基準に達していない場合は、アクセス数、滞在時間、各ページのアクセス状況などさらに詳細を分析していきます。ここまで分析すると原因が浮き彫りになることが多く、アクションプランを考えやすくなります。   Step.4 「リビュー」 アクションプランを実行したら、必ずBefore→Afterを確認するようにします。効果があった施策であれば、継続すれば良いですし、もし効果がなければ、違う施策を考え、実行していきます。 Step.3とStep.4を繰り返すことで、初診相談数は安定してきます。   2. 成約率 矯正歯科医院経営の一致指標である成約率。成約率は、契約数/初診相談数になります。 成約率が高いクリニックの場合は、数字だけの管理でも問題ありません。しかし、成約率が低い場合には、患者台帳を作成し、患者毎の一覧を作成し、課題を探っていきます。   Step.1 「患者台帳を作る」 患者台帳には、患者ステータス、来院経路、予約日、初診相談日、初診相談結果(検査予約、返事待ち、リコール)、検査予約日、検査来院日を設けます。患者台帳への記載は、まとめてではなく、アクションがあった日に記載するようにしていきます。   Step.2 「基準を作る」 成約率も初診相談数と同じように基準を設けます。例えば、基準を50%とした場合、50%クリアしていればOK、クリアしていなければNGとします。   Step.3 「集計する」 月に1回は患者台帳を集計していきます。9月中に初診相談を受けた方のうち何人が検査に進んだか、を把握します。9月の初診相談で10月になってから検査予約をされる方もいらっしゃいますので、遡って数字をアップデートしていきます。このように管理することで、9月に実施した初診相談の内容をリビューすることができます。   Step.4 「アクション」 例えば、成人の成約率は基準をクリアしているが、子どもの成約率が基準をクリアできなかったとします。この場合、子どもへの初診相談内容の見直しをしていきます。この改善を繰り返していくことで、成約率は必ず上がってきます。   財務諸表での数値管理 試算表(財務諸表)が毎月税理士さんから送られてくると思います。しかし、詳しく内容を確認されている先生は少ないのではないでしょうか?なぜなら、試算表は遅行指標であり、結果だからです。結果を見たところで、売上や利益が変わるわけではありませんので、当然のことだと思います。 しかし、現金の推移や経費に関しては、試算表で確認できますので、ポイントを絞って確認して頂くことをおすすめします。   1. 現金 試算表で見て頂きたい一つ目の項目は、現金になります。現金の残高だけではなく、現金の推移を確認します。現金さえ増えていれば、経営的には問題ありません。 毎月の資金繰りは問題なくても、賞与の支払い、労働保険の支払い、税金の支払い月に資金繰りが苦しくなることがありますので、どれくらいストックしておけばよいか、把握しておく必要があります。   2. 経費 一般的に経費は固定費と変動費に分類することができます。しかし、ほとんどの会計ソフトは、売上原価(材料費と技工費)のみを変動費としてプログラムされており、違う視点で確認する必要があります。 「コントロールできない経費」と「コントロールできる経費」 コントロールできない経費を固定費、コントロールできる経費を変動費として捉えます。例えば、家賃や光熱費、減価償却費等が固定費に該当します。一方、材料費、技工費、人件費、広告費はコントロールできる経費ですので、変動費として捉えます。 金額ではなく比率(パーセンテージ) コントロールできる経費を変動費として捉えていきますので、金額ではなく、売上に対しての比率(パーセンテージ)で確認していきます。   ① 広告費 初診相談数の数値管理で1件の初診相談獲得広告単価の管理とともに、売上に対しての広告比率を確認します。広告費の金額が高くなっていても、売上に対する比率が変わっていなければ問題ありません。 また、売上に対する広告比率が安定している状況で、もっと売上を伸ばしたければ、広告費をさらに投下することで、売上・利益ともに増えていきます。   ② 人件費 人件費もコントロールできる経費、変動費になります。金額ではなく、売上に対しての比率を確認します。人件比率が高くなっている場合は、生産性が落ちていますので、売上を上げていくために力を注いでいく必要があります。 本来は、人件比率はスタッフを増員する際に使う指標になります。   ③ 材料費・技工費 インビザラインやインコグニト、ハーモニーなどの原価をコントロールすることは難しいですが、その他の材料費・技工費に関しては、コントロールすることが可能です。 特に材料の発注をスタッフに任せている場合、売上に対して、材料費が何パーセントになっているか、確認が必要です。  
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矯正歯科医院経営「3つのステージと3つの視点」

歯科医院に限らず、売上の壁という言葉を耳にされたことがある先生も多いのではないでしょうか。 1億の壁、3億の壁、そして10億の壁です。簡単にいうと売上1億円を達成するための経営と3億円、10億円を達成するための経営は全く別という考え方です。 弊社のコンサルティングも1億円を突破するまでの内容と3億円を突破していくための内容は、当然ですが異なってきます。   3つのステージ 矯正歯科医院も他の業種と同じように売上の壁、ステージがあると考えています。矯正歯科医院の場合、診療時間とユニット数でキャパシティーが決まっています。そのため、売上ではなく、治療契約人数をベースにステージを分けています。 1st Stage…年間100名までの治療契約 2nd Stage…年間100名〜150名までの治療契約 3rd Stage…年間150名以上の治療契約 年間100名までの「ファーストステージ」は院長一人で初診カウンセリングから診療まで可能です。 年間100名を超え、150名を目指していく「セカンドステージ」になると、徐々に予約が取りづらくなり、院長一人での初診カウンセリング、診療体制に限界がきます。 そして、年間150名を超えてくる「サードステージ」では、診療時間、ユニット数などキャパシティーの問題、診療体制を見直さないとスムーズな診療ができない状況となります。   3つの視点 経営はバランスがとても大切になります。そのため、矯正歯科医院経営を3つの視点から考えていきます。 1. マーケティングの視点 マーケティングの視点とは、売上を拡大していく視点になります。 初診相談数をどの来院ルートから何人集めるか、そのために、どのようなアクションをしていくか考え、行動していきます。例えば、ホームページから初診相談数を30人集めると計画した場合、アクセス数をどのように集めるのか等を具体的に考えていくことになります。 また、売上を構成する要素である成約率(契約人数/初診相談数)を何パーセントにするか、そのパーセントを達成するために、どのようなアクションをしていくのかを考え、実行していきます。 2. マネジメントの視点 マネジメントの視点では、「組織」と「人」の両面から考えていきます。コーディネーターを配置するのか、どのように人が育つ環境を整備するのか、組織として考えていきます。 また、コーディネーターの育成、歯科衛生士のスキルアップなど、個々のスキルアップも図っていく必要があります。 3. システム化の視点 システム化の視点では、人に依存していたものをシステム化し、だれでも同じようにできるようにしていくことです。例えば、患者情報の管理の方法、アポイントの取り方などがあげられます。   ステージに応じた経営戦略 ステージに応じた経営戦略とは、限られた時間を3つの視点のどこに重きを置いて経営していくか、ということになります。 1st Stage 年間の治療開始人数が100名に達していない「ファーストステージ」では、マーケティング活動に注力していきます。 このステージは、患者アポイントが入っていない時間帯もありますので、その空き時間もマーケティング活動にあてることができます。マーケティング活動は2つだけです。 1つ目は、初診相談数をとにかく増やすようにアクションしていきます。 ホームページからの新患を増やしていくのであれば、毎日ホームページのアクセス状況を確認し、さらにコンテンツを充実させる、アクセス数を確保するためであれば、ブログを毎日更新する、あるいはリスティング広告を活用するなど、多くの時間を割いて頂く必要があります。 広告を嫌う先生もなかにはいらっしゃいますが、クリニックの存在を患者に知ってもらわなければ、看板を出していない飲食店と同じです。 一般歯科からの紹介を増やしていきたい場合には、歯科医師会の活動をしたり、挨拶まわりをしたり、SNSを活用したり、とにかく接触回数を増やすことを意識して時間を使っていきます。 2つ目は、成約率を上げていくことです。 バイト先の一般歯科では成約率は高かったのに、いざ開業してみると、なかなか成約率が上がらない、というケースを見かけます。当然の結果だと思います。バイト先では、バイト先の院長と患者の信頼関係ができており、あとは矯正医が治療の話さえすればよいという状況ですから。 成約率を上げていくためには、患者台帳をつくり、どのようなパターンのときに成約できたか、何が良かったかを体系化していく必要があります。 問診票の使い方、説明の仕方、治療へのハードルが何だったか等を具体的に記載していき、成約パターンの数を増やしていく必要があります。 このステージでは、マーケティングに80%、人材育成に20%ぐらいのパワーバランスになります。 2nd Stage 年間の治療開始人数が100名をコンスタントに超えてくる「セカンドステージ」では、マーケティングの視点からマネジメントの視点、システム化の視点へパワーバランスをシフトしていきます。 100名をコンスタントに超えてくると、アポイントが取りづらい状況がでてきます。特に、初診相談の予約が2週間以上先になる場合は要注意です。 マネジメントでは、コーディネーターを育成する、歯科衛生士の業務範囲を増やしていき、院長の時間を確保していく必要があります。また、システム化では、アポイントの取り方や患者管理の方法など誰がやっても同じようにできるようにシステム化していきます。 ファーストステージで、新患の集め方、また成約率の体系化ができている状況ですので、組織、人に目を向けていくステージになります。 3rd Stage 年間の治療開始人数が150名を超えてくる「サードステージ」では、「戦略」があるかどうか、とても大切になります。 なぜなら、このステージにくると、売上は伸びてきているのに、思ったほど利益が上がらない、という状況もあり得ます。クリニックの収益構造、キャパシティー等を考慮した「戦略」が必要になります。 このステージは、他のクリニックの成功事例を模倣するだけでは難しくなります。また、損益分岐点が上がってきますので、マーケティング活動の1つ、安定した初診相談数を確保するための「戦略」を再度構築する必要があります。
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矯正歯科医院経営「消費者行動の違い」

消費者行動の違い 経営という大きなカテゴリー、また歯科というカテゴリーで考えると一般歯科医院経営も矯正専門歯科経営も同じという方も多くいらっしゃいます。 しかし、そもそも解決したいことが違うわけで、一般歯科医院の経営と矯正専門医院の経営は全く別ものだと考えています。   緊急性と重要性 消費者(患者)行動から考えてみたいと思います。「歯が痛い」と医院探しをするAさん、「歯ならびが気になっている」Bさん。医院探しをするという行動は同じですが、緊急性から考えると全く違ってきます。 一般歯科では、「今すぐなんとかしたい」というAさんの緊急性の高い悩みを解決してあげます。一方、「歯ならびが気になっている」Bさんにとって重要なことになっていますが、緊急性は決して高いとは言えません。 緊急性の高い治療を中心にしている一般歯科と緊急性が高くない治療を中心にしている矯正専門医院。マーケティング手法は同じでいいのでしょうか? 矯正歯科治療を考えている消費者へのマーケティングは、緊急性ではなく、歯ならび治療の重要性を理解してもらう、ことが大切になります。緊急性を高めるために「床矯正」という手法をとられている歯科医院もあるようですが。。。 矯正歯科治療は、ほとんどの場合緊急性は高くないために、重要性やメリットを伝えていくことをしなければいけません。そのために、初診相談というステップをもうけ、専門家が重要性をきちんと伝え、重要性を理解してもらっているわけです。 重要性を高めていくマーケティングが必要な矯正歯科治療と緊急性が高い治療に対応していく一般歯科のマーケティングは、違ってきて当然ということになります。   AISAS(アイサス) インターネットが普及する以前は、AIDMAという消費行動理論が中心でしたが、2004年に電通が提唱したAISASが現在の消費者の購買行動を説明するモデルになっています。 Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有) の頭文字を取ったものになります。 AIDMAからDesire(欲求)とMemory(記憶)がなくなり、3番目のプロセスとして「Search」が、Action(購買)後のプロセスとして「Share」が追加されています。 AISASにおける「Search」は、製品やサービスに関心をもった消費者が、「購入前にGoogleなどの検索サービスで情報を調べる」プロセスになります。また、最後の「Share」は、ブログやSNS、クチコミサイトなどで、製品やサービスの感想などの情報を投稿(情報共有)するプロセスになります。 矯正歯科治療に当てはめてみると、Attention(検診や誰かに指摘、広告等をみて歯ならびが気になりだす)、Interest(きれいな歯ならびになるのかなと興味をもつ)、Search(歯ならび、矯正歯科治療について検索する)、Action(初診相談、治療をはじめる)、Share(矯正治療に関して情報発信)という流れになります。   緊急性とAISAS 緊急性が高い治療の場合には、Search(検索)の時間は短くなります。とにかく痛みを今すぐなんとかしたい場合には、すぐに対応してくれる所はどこか、ということで検索します。当然検索する時間は短くなります。 一方、緊急性が高くない治療の場合には、なんとなく情報収集をしますので、検索する時間は長く、複数回にわたります。また、ネット上での検索だけではなく、知人に聞く等のSearchにも時間をかけることになります。   矯正治療をはじめるまでの患者ステージ 矯正歯科治療を開始するまでの患者ステージは、大きく4つに分類することができます。 1.歯ならびが気になりだす(Attention) アメリカでは10代の約半数が矯正歯科治療をしているといわれていまが、日本では数パーセントという現状ではないでしょうか。 歯ならび治療に興味をもってもらうためのマーケティング活動は、直接クリニックの利益と結びつきにくいために、このステージに力を入れていくのは、単独のクリニックでは難しいのが現実です。 しかし、矯正歯科治療の市場規模を拡大することは、長い目で見ると必要なことで、もっともっと矯正歯科治療の素晴らしさを業界全体として語っていく必要があると感じています。 また、すでに矯正歯科治療で美しい歯ならびを手に入れた方、治療をされている方達の市場拡大への後押しがShareの時代には求められます。 2.歯ならび治療に興味をもつ(interest) 矯正歯科治療についてなにかしらのきっかけで興味を持つステージになります。このステージから各クリニックのマーケティング活動は本格化していきます。 3.歯ならび治療について詳しく調べる(Search) 矯正治療は、ほとんどの方にとってはじめての治療になります。知人に聞いたり、インターネットで検索したり、情報収集をスタートしていきます。 「矯正治療はどんな治療なのか」、「矯正治療は痛いのか」、「どれくらいの期間がかかるのか」、「治療費はいくらぐらいかかるのか」など、矯正歯科治療について調べていきます。調べることによって、矯正治療への不安や期待、疑問などが顕在化してきます。具体的に、自分の場合はどうなのか、や子どもの場合はどうなのか、と情報収集を進めていきます。 4.どこで治療を受けるか医院選びをする なんとなく矯正歯科治療の知識を得て、治療の必要性を認識したら、もしくは矯正治療の必要性を確認したいと思ったら、次は医院選びのステージに入っていきます。 しかし、ここで問題なのが医院選びをしている患者は自分の知っている範囲の基準でしか医院選びができないということです。 例えば、自宅から通院しやすいかどうか、土日診療しているか、平日は遅くまで診療しているか、治療費はいくらぐらいか、等治療以外の部分で、しかもなんとなくしか医院選びができません。 なんとなく、という言葉を多用していますが、患者は矯正歯科治療の専門家ではないため、また過去に経験したことのない治療であるため、医院選びの基準を持ち合わせていません。そのため、こちらから医院選びの基準を示してあげる必要があります。